……でも、そうなるのも仕方ないのよね。

実は、ある程度頭が冷静になってから、ファリス様に疑問に感じていたことを聞いてみた。


どうして私の素性を知っておきながら、わざわざ国中の令嬢に手紙を出して集まらせたのか、ということを。

それはずっと、心の中でもやもやとしていた謎だった。

だって、私がどこの貴族の令嬢か分かっていたなら、私だけに手紙を出せばいいだけの話だし、あれだけ頭の回るお方だもの、もっとうまいやり方があったはず。

なのに、あんな公衆の面前で私に求婚するなんてどうかしてる!



それに対し、ファリス様はこう答えた。


『あれは"敢えて"ですよ。ビアンカが私の思う人であると、結婚相手はあなたであると認知して欲しかったのです。ああすれば今後言い寄る人間もいないでしょうし、あなたが次期王妃になると周りも理解してくれる。それにあなたも、そう簡単には逃げられなくなりますから』


つまりだ。

それはすべて仕組まれた舞台であった、ということ。


あれだけ大々的にやれば、私ももちろん父だって断れなくなる。
仮に断ることができたとしても、私たち家族に待つ未来は、明るいものではないだろう。

王太子に思われている女に縁談を申し込む人もいないだろうし、王太子の言葉は国の言葉といっても過言じゃない。

それに逆らったと、下手をすれば家族全員牢屋行き……なんてこともあるわけだ。