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――人間の適応能力とは、まったくもって素晴らしいものである。


ここへ連れて来られた当初はどうなることかと不安だったが、不思議と心穏やかに過ごしている私。

私が城の中で生活するようになって、早10日が過ぎようとしていた。


もっと大変だと思っていた。
色々な思いが駆け巡って、夜も眠れぬ日々が続くと思っていた。

けれど、天蓋の絵が少し煩わしく感じる以外は(まだ言ってる)、寝心地のいい上質なマットとシーツで、5分かからず夢の世界に行けてしまうし、そのまま朝までぐっすりと寝られて体調もすこぶるいい。

突然城で生活するようになって、まして私は男爵家の女で、城の中で働く者の中には快く思っていない人もいるだろうと、それをなにかしらの形で私にぶつけてくるのでは、なんて物語ではありがちな"いじめ"を警戒していたが、実際はそんなこともなく、とにかくみんな優しく接してくれる。

まあさすがに今までのように、自由に外出したりはできなくなって、基本部屋にいることが多いわけだけれど。

でもファリス様が時間を見つけては部屋に訪れ、たわいのない話をしたり、天気のいい日は城の庭を散歩したりと、それなりに気を遣ってくれていて。

アマンダもほぼ私の部屋につきっきりで、常に私の話し相手になってくれている。

お陰で、初めは味を感じられなかった料理も、2、3日経ったくらいから普通に美味しく、お腹いっぱいで動けなくなるほどまでに食べられるようになってしまった。


慣れるの早すぎと思うでしょう?

自分でも驚いているくらいよ。