アマンダはキッパリと言った。
躊躇いのない返答に、疑問を覚える。
「……どうしてそう言い切れるの?」
「それは現国王様夫妻のこれまでの軌跡を、噂ながらに聞いて知っているからですわ。あのおふたりのお子様ですもの、思いは一途だと。……そういえば、ビアンカ様と王妃様の出会い方が少し似ているような」
「そうなの?」
「ええ。確か国王様も夜会で王妃様に一目惚れなさったとか。もはや美しき恋愛物語として語られておりますわ」
私が生まれる前の話なので、国王様がどういった経歴で王妃様と出会い結婚したのか、まったく知らない。
いや、もしかしたら聞いていたのかもしれないが、自分には関係ないと記憶に残っていないだけなのかもしれないけれど。
ただアマンダの口ぶりからして、どうも国王様が一途に王妃様に思いを寄せ、結婚まで漕ぎつけたようなのは確かだった。
現に今でも国王様夫妻は仲睦まじく、理想の夫婦像として称えられている。
それゆえか国内の安定にも繋がり、国の繁栄も著しい。
そうなるまでに至ったのは、王妃様が思いを寄せる国王様を受け入れ、互いに愛せるようになったからこそ。
身分の違いや王妃という重圧も、すべて乗り越えてきたからこその結果だ。
たとえ私と王妃様が似ていたとして、同じように思われていたからと、王妃様のようにファリス様の気持ちを受け入れ、自然と愛する気持ちが生まれるだろうか。
そもそも出会いこそ似ていたとしても、その先はまったく異なるだろう。
国王様夫妻は、それこそ美しき恋愛物語と言われるだけ、ロマンチックな過程を辿って、愛を育んでいったのだろうけれど、私は違う。決して人には言えない状況を経ての今だ。
美しいなんて正反対の、語ることすら憚れる、一歩間違えば悪女と言われかねない痴話。
そんな主役の私が、果たしてファリス様を愛せるだろうか。
愛を持たないまま、"愛し合う行為"をしてしまった私に。


