王太子様の策略に、まんまと嵌められまして~一夜の過ち、一生の縁~

「どうしました?」

そう言いながら、王太子様は私を愛おしそうに見つめたまま微笑む。


私に見せたその表情は、あの会場でふいに頭の中に浮かんだ表情、そのままだった。


……そんな。
ただの夢や妄想だと思っていたのに。

それは忘れていた記憶だった。
間違いなく私は、あのときこの表情を見ている。


胸の高鳴りが収まらない。

吸い込まれるような、深く透き通る海のような色の瞳で見つめられると、恥ずかしいようなこそばゆい感覚になる。

我慢できずに、顔を横に背けた。

もう直視できない。
そんな気持ちはないのに、瞳が交わっていると、変な感覚に陥ってしまいそうになる。


「ああ、ビアンカ。逸らさないで下さい」

目を逸らしてしまったからなのか、王太子様の残念そうな声が聞こえたとともに、顎に手を掛けられて、背けた顔を戻された。

「……っ」

再び瞳が交わる。

「もっと見ていたいのです、あなたの顔を。せっかくまたこうやって触れ合えたのです、近くでビアンカを見つめていたい」

「そんな……。あり得ない」

「なぜ?」

「ヴィルヘルム王太子様が、私如きにそんな言葉をかけるなんて、あり得ませんっ……!」