――そしてあの日から10日後、ようやく念願のものがやってきた。
いつもよりも下腹部には鈍い痛みが走るし、腰も重い。
しかしその痛みが、今回ばかりは苦痛とは思わなかった。
むしろ嬉しい。
肩にずっしりと乗っかっていた不安が、すとんと落ちたように軽くなり、痛みも心地よく感じられてしまうから不思議なもの。
それだけ自分の中で、支えることが苦しくなるほど大きな問題だったと改めて思い知らされる。
別に子供が欲しくないわけではない。
ちゃんとした道順を踏んで、その過程で自然と宿ったならば、これほどない幸福に満ち溢れるだろう。
けれど今回ばかりはそうはいかない。
望んでいない相手に望んでいない行為。
これでは子が元気にこの世に生を受けたとしても、幸せな人生を歩むことはできないだろう。
誰もが不幸になる人生を歩みたくはない。
だからこれで良かった。
あとは王太子様が相手であった私を捜すことなく、このまま穏便に時が過ぎていけばいいだけ。
あのアマンダがあれからなにも言ってこないところを見るに、それも杞憂に終わるだろう。
彼女は私以上に貴族の噂に敏感な人だ。
どこから情報を得ているのかは分からないけれど、アマンダが騒いでいないということは、つまりそういうことなのだろう。
……これでいい。
全ての問題は取り払われた。
もう私と王太子様の間には、なにもない。
住む世界が違うのだから、これからも決して交わることはないのだ。


