9月22日 12時6分30秒




戦う場所は階段の踊り場。



右手をカバンに突っ込み、後ろ振り向き迎え撃つ体勢を作る。



少女は4段上から、大口をあけて降ってきた。




左腕で顔周辺をかばうと、少女は思いっきり左腕に噛み付いた。




ミシミシと骨がきしむ音。しびれる様な痛み。




しかし少女の歯が、腕の肉を引き裂くことはなかった。




今着込んでいる上着は防刃効果のあるケブラー繊維で出来ているため、ナイフも通さない。




殺人を犯すときには武器を奪われるリスクがあるので、念のためにと購入したもの。




噛む行為に夢中になってる少女は、無防備。




右手でカバンから催涙スプレーを取り出し、少女の目に吹きかける。





突如視界を奪われた少女は一瞬ひるむ。



その隙に噛まれた腕を一気に引き抜く。




ガギッ!と不快な音がする。音の正体は少女の歯が何本か抜けた音。



上着に白い歯がくっついてとれた。




目を押さえながら、よろめく少女を置き去りに、早足で階段を駆け下りる。




思いのほか上手くいきすぎて、少々不安になる。




逃げずにここで倒してしまうことも脳裏によぎるが、いまさら階段を上がるのも大変なのでやめておく。



そのままマンションを出る。



タクシーを呼び止めて車に乗り込む。