盛り上がる灼熱の赤黒い炎。
ケルベロスは、二人に向かい片足を地面に何度も擦り付け、舌なめずりを繰り返す。

耳を澄ますと、ウーゴはどうやらこの【道】の出口を探っているようだった。
その足音は、疾風のごとくあまりにも早くて、目眩がしてくる。


「ウーゴ!無理をしてはいけない!」

「ウーゴ!!」

皆が、彼女の身を案じてそう名前を叫ぶけれど、彼女の耳には届かないようだった。
その証に、彼女の足は止まる気配がない。


「…ちぃっ!こんの化物め!さっさと消えた方がいいぞ、っと!」

「仕方がない!レヴィ!合わせ技だ!」

「くくくっ!貴様らに何が出来る!メトゥ・ザ・サン!!」

「ぐあっ」

「ジャック!」


ケルベロスが放った閃光がジャックを飲み込む。
それは、無数の剣となって、ジャックの身を切り裂いていった。

その瞬間、ケルベロスの後ろにウーゴの影が重なったように見えたのは自分だけだろうか?
けれど、それよりも今は…。

「オリヴァーお願い!ジャックを!!」

「分かりました!けれど、アリア!貴女でも此処は!!」


そんなオリヴァーの静止も聞かず、アリアはケルベロスに立ち向かう。
深紅の髪を逆立てるその様は、戦いの女神にも似て、神々しかった。
アリアは、真っ直ぐに敵を捉えて言い放つ。


「お前たちの言いなりにはならない」


と。