その日は、ひどく不思議だった。 不思議なほどに、【日常】だった。 いつものように目を覚まして、いつものようにあの腰まである黒い髪をといてもらって。 「おはようございます、お嬢様。」 「………おはよ、暁。」 いつものように、専属執事の暁(あかつき)だけを部屋に通して。 私、東條 凛音(とうじょう りんね)はまた、ありふれた日常を繰り返すはずだった。