「ほわー……」
 

女性は途中でタクシーを掴まえて、真紅と黎を押し込んだ。


勢いのままに連れて来られたのは大きな日本家屋だった。


その前に立った真紅は思わず感嘆の声をもらした。


「影小路本家の方が大きいんじゃないか?」
 

隣に立った黎が言った。


「そうかもしれないけど、向こうはすごく旧(ふる)かったから……」
 

真紅はまた、大きな門から見える庭木と奥の方に小さく見える家屋を見た。


(これが黎のご実家……)
 

女性に連れて来られたのは、黎の生家である桜城家だった。


「黎、あの人って……」


「弥生さんだ。架の母親」
 

やっぱり、と真紅は内心肯いた。架の面差しと似ているのだ。