「真紅」


「うん?」
 

黎が隣を歩く庵への帰り道、名前を呼ばれて真紅は黎を見上げた。


「……よかったな」


「……うん」
 

海雨は、澪の告白を受け容れはしなかった。けれど、拒絶もしなかった。


海雨の時間が暮無を置いて、少しずつ動き始めている気がする。
 

真紅たち、一度ずつ終わりがある始祖の転生と違って、始祖当主には終わりがなかった。


この先、暮無の命がどうなるかはまだわからない。


このまま転生の檻にあるか、その檻を外れて生まれ変わることもなくなるか――。
 

真紅たちが、まだ転生を繰り返しているように。
 

真紅から黎の手を握ると、驚いたように見て来た。


「……この先、私たちや暮無様の命がどうなるかはわからない」