家を出て、道すがら思考に落ちる。
 

霊獣であるために人には見えない紅姫は真紅の隣を歩いていて、黒い小鳥の姿は普通の人にも見える涙雨は隠形して真紅の肩に乗っている。
 

黎は小埜姓であっても、小埜家の人間ではない。


家のことを――陰陽師や祓魔師(ふつまし)のことを完全に理解してくれというのは無理かもしれない。
 

たぶん真紅は、仕事の理解を黎に求めてはいない。


だから、どこまで話していいかの境界線もわからない。
 

真紅が黎に望んでいる位置と、黎が真紅に望んでいる位置にはずれがある。
 

自分をどう考えてほしいか。どうとらえてほしいか。
 

……上手く言葉に出来なくて困っている。