「なんで?」


「……真紅は、家族を大事に思ってる。真紅には紅亜様しかいなかったから、紅亜様から引き離すこともしたくない。紅緒様や黒藤も、真紅の大事な『身内』だ。

何より、真紅が『理由』になるほど大切にしている梨実との仲を引き裂くことも出来ない。それに陰陽師ってのは、真紅が自分で選んだ自分の居場所だ」


「ないないづくしだね、お前は」
 

ふう、と息を吐く澪。そして、薄ら笑みを浮かべる。


「そんなお前だから、お嬢さんは毎日惚れ直してるのかもな」
 

澪のからかうような言葉に、黎は更に眉間のシワを深くした。


……そんな自信、持てるわけがない。


「自分の家族も大事にしてくれる。――それってお嬢さんにとっては結構でかいと思うよ」


「………」


「あと、何度も言うけど。お嬢さんは流派からの批判も反対も覚悟でお前と付き合ってる。それをお前が先に負けてどうする」
 

そんなのただの負け犬だ。澪の暴言にも、黎は言えることがなかった。