好きになった子は陰陽師になった。ーさくらの血契2ー【完】




《……巫女様》


「いいの、紅。これで、いいの」
 

真紅は、次々とあふれてくる涙を何度も拭う。


真紅にはこうするしかない。こうするのが一番の道だ。
 

この業(ごう)だけは、誰にも明かせない。
 

――影小路に入る前、白桜に言われていた。陰陽師としての覚悟を問われたとき。


『……陰陽師となって知ったことを、墓場まで持って行く気概があるかどうか、だ。

伴侶や親と言えど口にしてはならない依頼を、多く受けるのが陰陽師だ。依頼の内容や結末に心を痛めても、その理由は誰にも話してはならない。悟られてもならない。

口に出して辛さを緩和することは、俺たちには赦されない。……それでも、望むか?』


『守秘義務なんてものがある以前からの、陰陽師の掟。破れば相応の罰を喰らう、法理よりもいにしえの、人の約束だ』
 

今、真紅に対してそれが試されているのかもしれない。