黙ってしまった真紅の頭に、紅亜が手を置く。


「真紅ちゃんに、ここを出てけ、なんて言っているわけじゃないわ。私こそ、あとはずっと真紅ちゃんと紅緒のために生きるって決めてるのよ。真紅ちゃんが一人前に成長しても、離れて暮らすなんて考えられないわ。真紅ちゃんの生き方は――真紅ちゃんはもう、自分で決めていいほどになっているって言いたいのよね。紅緒は」


「も、申し訳ありません姉様っ。わたくしの言葉足らずで――」


「紅緒。わざとでしょ、今の」
 

慌てる紅緒だが、姉に言われて押し黙った。


反論がないということは、反論出来ないということだろう。


「………」
 

真紅は腕の中の紅姫を見た。


その視線を受けて、紅姫は三毛猫の姿に戻った。


首を伸ばして真紅の頬に額をこすりつけ、慰めるような行動をした。
 

――考えた。


今はまだ、紅緒の許で修行中、という立場の自分。


でもいつか、一人前にならなければいけないのだ。


総てを、自分で決定する大人に。


――そして真紅は、始祖の転生という業(ごう)を背負った陰陽師でもある。