「無涯、か……」 「ああ……その点は兄貴と若君は一緒なのか」 ふと、今思いついたように言う弟に、黎は無言を返した。 桜城から出ても、名乗れるのは小埜姓だ。 小埜は小路十二家の一つ。 黎が影小路の檻(おり)から出られるのは――出られたとしても、まだ先なのだろう。 しかし、恋うた真紅は反対に影小路に入り、そこの人間となった。