なのに、妹を汚すライバルが現れる。

“彼氏”という邪魔者だ。

このままでは、あぶない。

ことみをキレイな状態で保存する方法はないかと、いろいろ調べてみた。

人間を剥製にできるのか。

できないとしたら、人を漬けられるほどの大量のホルマリンはどこで買えるのか。

毎日夜中までネットを検索していると、ある日、となりの部屋から聴き慣れたK-POPが流れてきた。

ことみの携帯の着信音。

普段から使っていた聴診器を壁に当て、会話を拾う。

守るというのも、実に大変だ。

妹は電話の最後にこう言った。

『今から行くね』

僕はそれを聞いてあわてたなー。

きっと、彼氏からの呼び出しにちがいないと。

若い男女が夜中に会ってすることなんて、ひとつしかない。

『守らなきゃ……』

汚れないように。

妹がこっそり家を出たあと、僕も後を追って玄関へ。

そこでは、愛犬が首を傾げながら目を潤ませていた。

『お前も行きたいのか?』

僕の問いに、胸が締めつけられるような、か細い鳴き声で答える。

『しょうがないな。連れてってやる』

愛犬を抱え、今にも見えなくなりそうな背中を追う。

妹は15分ほど歩き、川べりの砂利道で止まった。

周囲を見渡し、誰かを捜しているかのよう。

夜中にこんな所で待ち合わせなんて、男のセンスを疑う。

『ことみ!』

『ぉ、お兄ちゃん!?』

怯えながら驚くその顔も、実に可愛い。

『ダメじゃないか! こんな時間に……』

『は? ほっといてよ』

『帰るぞ!』

僕は妹の手を引く。

『はな゛してっ!』

すぐさま、邪険に振り払われる。

怒った顔もまた、可愛いすぎて興奮する。