(そこで暮らすことになったら、ノアは付いてきてくれるのかしらね)



 見知らぬ土地に行くのは心細いだろうから、せめて信頼する彼女と一緒にいたいという気持ちはあるが、強要はできない。

 それより、今のうちに持っていきたい物をまとめておいた方が良いだろうか。たくさんの物は持っていけないにしても、大事な物はなるべく持っていきたい。


 アリシアは手近にあったノートのページを破り、持っていきたい物をリストアップし始めた。



(小説……は重いから2冊まで。それから使い慣れたティーセットは持っていきたいわね)



 サラサラとペンを走らせると、あっという間に紙が埋まっていく。



(あとはハーブティーの効能と美味しいブレンドをまとめたノート。イルヴィス殿下が気に入られたハーブとか全部メモしてあるもの、無くせないわ。あ、殿下から頂いた髪飾りも──)



 ごく自然にそう考え、書き出してから凍りついた。


 イルヴィスの好みが記してあるから大切なノートと、イルヴィスにもらったから特別な髪飾り。


 ここから追放されることは、イルヴィスから婚約破棄を言い渡されたということなのに、追放された先に彼との思い出を持っていこうとしている。