王宮から自宅へ戻ったアリシアは、自室に入るなりベッドへ倒れ込んだ。



「あああ疲れた〜」


「お疲れ様でした、お嬢様。風呂の準備ができておりますが、どうなさいますか?」


「入るわ。ローズマリーの石鹸を用意してもらえる?」


「かしこまりました」



 指示を聞いたメイドが部屋を出たのを確認して、アリシアはベッドの下から一冊のノートを取り出した。

 この世界についての記憶を整理するため、昨日から書き始めたものだ。



(王子の印象は、ほぼ漫画の通りね)



 漫画のあらすじは昨日一生懸命に思い出したのだが、何せ1回読んだだけのシリーズだ。細かい出来事までは思い出せない。

 それに、思い出したところで『アリシア・リアンノーズ』は中盤以降出てこないキャラクター。そこまで役には立たないかもしれない。



(でも、あの人がラベンダーが好きだというのは本当なのかしら)



 ノートの白紙のページに『イルヴィス王子』、その隣に『ラベンダー』と書き込んでグルグル囲った。

 そんな設定があれば、前世の“彼女”でも親近感が湧いて覚えていそうなものなのだが。



(まあでも、彼だって主人公ではないし、そんな細かい設定まで描かれてないか)