国王陛下の極上ティータイム

「え、ええ、少し道に迷いまして」


苦し紛れのセレスティーナの嘘を、ランティスは「そうだったんだ、無事でよかったよ」と笑って肯定するのだ。恐ろしいことこの上ない。


「それにしても、セレスティーナもいなくなってしまうなんて、偶然は重なるものだね」

「え?」

「そこにいる彼女も、昨日一時的に行方不明になったんだよ。ちょうどセレスティーナがいなくなった時と同じ時間に」


にっこりと笑って見せる、その笑顔は恐ろしい以外の何物でもなかった。

やはりこの王の心の中は真っ黒なのではないだろうか。真っ白で綺麗に見えるのはその笑顔と言葉だけで、そのほかは全て真っ黒なのではないかと思えて仕方がない。

ランティスがいつもとは違う雰囲気でそこにいることを、さすがにセレスティーナも分かっているようだった。先ほどから笑顔をひきつらせている。


「そ、そうなのですか、偶然ですわね…」

ランティスは一歩セレスティーナに近づきながら「偶然ってどういう意味か知っている?」と尋ねた。


「え?」


「偶然というのは、何の関係もなく予想もしないことが起こることなんだ」


「な、何をおっしゃりたいのですか?」とセレスティーナは問いかけた。ランティスの遠回りな言い方では何を言いたいのかが分からないらしかった。いや、薄々は分かっていたのかもしれない。


「ごめんね、俺はこんな言い方しかできないから」とランティスは笑ってこう言った。


「単刀直入に言うと、俺は今回のことは偶然などではないと思っているんだよ」


場の空気が一気に凍り付いた。ひきつったような笑顔を辛うじて保っていたセレスティーナまで表情が崩れ固まってしまったのだ。