早くここから出なければ、直に夜が訪れる。

この国の夜は冷える。凍えてしまうだろう。

そう思うとクラリスは何とかしなければと自身を奮い立たせる。

部屋に窓がないため内部も真っ暗で分からなかったが、次第に目が慣れるとどうやらここが物置であることは分かった。何が置いてあるかまでは分からないが、たくさんの物があるらしい。

使えるものはないかと思ったところ、何か棒のような長いものを見つけた。それが何かは分からなかったがとにかくそれを持って、扉を叩く。

ガン、ガン、と金属がぶつかり合う音がする。

けれど扉は頑丈にできているようで、傷がつくどころかわずかな凹みすらできていない。

それでもクラリスは諦めなかった。何度も何度も扉を叩いた。

けれどどれだけ叩いても、叫んでも、助けは一切やってこない。

ついにクラリスは疲れて、その場にしゃがみこんだ。

閉じ込められてからどれくらい時間が経ったのか、空気がひんやりとしていることに気づいて、ああ、もう夜が訪れたのだと分かった。

夜になると冷え込むが、それ以上に困るのはこの周囲を訪れる人がいなくなってしまうことだった。

夜になり城に仕える人々の勤務時間が終われば、ここを通る人は一気に少なくなるだろう。

見回りをする衛兵が見つけてくれたらよいが、ここに来るかは分からない。可能性が低いと思った方が良いだろう。


誰も来ない。


クラリスの脳裏にその言葉が浮かんだ。絶望だった。