「誰か!」


扉をたたき続けても、叫び続けても、助けが来る気配は一切なかった。

試しに扉を開けてみようとしたけれど鍵がかかっているらしく、脱出は叶わなかった。いつの間に鍵を、と思ったけれど、相手は姫だ、誰かに鍵をくれと言えば手に入れることは簡単だったのかもしれない。

早くここから出なければ。陛下から直々に茶を持ってくるように頼まれたのは自分だ、セレスティーナ姫でもブランでもなく、クラリスに頼まれたのだ。

陛下はいつもと同じように爽やかな笑顔を浮かべていたけれど、忙しくされているのは本当だった。あの資料の山に目を通されるのだ、それを少しでも助けられるような茶を持っていきたい。その茶についてブランにも相談をしたい。

自分の仕事を認めてくださった方の役に立ちたいのに。

暗い部屋に閉じ込められて、何もすることができないこの現状とそれを引き起こした姫にクラリスは苛立った。


第一、ここはどこだ。


クラリスがまだ踏み入れたことのない場所で、ここが城のどこにあるのかさえ分からない。

今は何時だろう。

クラリスがローズヒップティーをお出ししたのは午後の茶の時間だった。それから大分時間が経っている。そろそろ夕食の準備が始まるかもしれない。