国王陛下の極上ティータイム

それからクラリスはローズヒップティーを淹れた。その茶を見たブランは驚いた表情で「やはりお前は天才だな」と賞賛した。

「貸してくださった本が良かったので」

「いや、あれは初心者用だぞ。こんな技術なんて、どこにも」

クラリスは嬉しく思いながら「これをお出ししても?」と尋ねる。けれどその答えは聞く前から分かっていた。

「もちろんだ。喜ばれるだろう」

ブランは目を細めた。


それからしばらくして午後の茶の時間の少し前、隣国の王女セレスティーナ姫がお見えになった。

用意に忙しくなる使用人達を傍目にクラリスはいつもと変わらず冷静に準備を進める。

それも終わると「行ってきます」とブランに声をかけた。

「大変だろうけど、せいぜい頑張れ」

ブランは雑誌に目を通しながら、先ほど仕入れてきたという新作の茶をすする。

せいぜい頑張れとは、どういう意味なのか。それと、頑張れって?

クラリスは疑問をいくつも感じながら、茶室を後にした。


セレスティーナ姫はジュリエッタ王女の応接室にお見えになるという。

いつもよりも数の多い衛兵に会釈をしながら茶を慎重に運び、応接室の前に来ると声が聞こえてきた。

「…まあ、そうでございますの?」

「ええ!なんと言っても我が国の職人が作った最高級品ですもの!」

「…それは素晴らしいですわね」

そして甲高い高笑いが聞こえてくる。それはジュリエッタ王女のものではなく、恐らくは隣国のセレスティーナ姫のものだろう。

そしてその自慢話を聞いているのはジュリエッタ王女。これがディオンが言っていた「押しつける」の理由なのだろうか。いや、これはジュリエッタ王女も本当に大変だろう。

クラリスは「失礼いたします、お茶をお持ちいたしました」と声をかけた。