国王陛下の極上ティータイム

「面白くて、つい」

その答えにブランは「何をしているんだ」と溜息を吐いた。

「それで倒れたら本末転倒だろうが」と言いながら、火を焚いたままのコンロの上にヤカンを乗せる。

「すみません」

突然怒られたことも、ブランがヤカンで湯を沸かし始めたことも、何も分からず不思議そうに見つめるクラリスに「倒れられたら仕事にならんからな」とぶっきらぼうにブランは言った。


「茶でも淹れてやる。待ってな」


クラリスは驚いて、だけど目を細めて「ありがとうございます」と頭を下げる。

それからまた文章に目を通す。特にペンで付け加えられた手書きの部分には注意をして。


「はい、お待ちどう」

ブランが淹れてくれたのは、ローズヒップティー。オレンジがかった赤い実がティーカップの底に沈んでいる。

「コンロのすぐ近くで乾燥させたおかげでもう乾いていた。これからも淹れる茶だ、試しに飲んでみろ」

「でも、いいんですか?」

「お前が淹れられなかったら私の仕事が増える。これを飲んで味を覚えろ」

いいから飲めと、ブランは強く勧める。

ローズヒップティーのことはさっきの本にも書いてあった。

効能、美肌効果の他にも疲労回復もあった。砂糖をスプーン2杯加えると飲みやすいことも、覚えている。

「ありがとうございます。いただきます」

クラリスは心から嬉しく思って頭を下げた。ブランはそっぽを向いたままだった。