やがてハーブティーの本を読み終わると、紅茶の本も開く。これはブランに手渡されたものではなく、茶棚の隣に置かれた椅子の上に無造作に置かれていたものだ。おそらくブランのものだろう。
クラリスはもともと茶が好きで知識も多かったが、そのどれもが独学だった。紅茶の本など、読みたいと思っていても仕事が忙しく本屋に行く暇さえなかった。
こうして本を読まなくても、今のままでも苦労はしないかもしれない。オルレアン伯爵家でもやってこれたし、その実力が認められてこうして王城にも呼ばれた。
それでも今はそれだけでは足りないと、全身で叫びたくなるような衝動に駆られているのだ。
身体が水を欲するように、酸素を求めるように、本の内容を知りたくてたまらない。
頁を捲っては文章を目で追いかけ、また頁を捲る。
そうやって何度も繰り返しているうちに時は過ぎ、昼の鐘にも気づかないまま、やがてブランが戻ってきた。
「お前は本の虫だったか」
その声で顔を上げると、「まさか、今までずっと本を読んでいたのか?」とブランが呆れたと言わんばかりの表情をして入り口で立ちすくんでいる。
「…お帰りなさい?」
なんといえばいいか分からずクラリスがそう答えると「ただいま、いや、そうではなくて」とブランは台車を押しながらクラリスに近づく。
「本は読んでるだろうとは思っていたけれど、ここまでとはな」
それからはっとしてクラリスに尋ねる。
「おい、まさか昼も食べていないとか言うんじゃないだろうな?」
クラリスはもともと茶が好きで知識も多かったが、そのどれもが独学だった。紅茶の本など、読みたいと思っていても仕事が忙しく本屋に行く暇さえなかった。
こうして本を読まなくても、今のままでも苦労はしないかもしれない。オルレアン伯爵家でもやってこれたし、その実力が認められてこうして王城にも呼ばれた。
それでも今はそれだけでは足りないと、全身で叫びたくなるような衝動に駆られているのだ。
身体が水を欲するように、酸素を求めるように、本の内容を知りたくてたまらない。
頁を捲っては文章を目で追いかけ、また頁を捲る。
そうやって何度も繰り返しているうちに時は過ぎ、昼の鐘にも気づかないまま、やがてブランが戻ってきた。
「お前は本の虫だったか」
その声で顔を上げると、「まさか、今までずっと本を読んでいたのか?」とブランが呆れたと言わんばかりの表情をして入り口で立ちすくんでいる。
「…お帰りなさい?」
なんといえばいいか分からずクラリスがそう答えると「ただいま、いや、そうではなくて」とブランは台車を押しながらクラリスに近づく。
「本は読んでるだろうとは思っていたけれど、ここまでとはな」
それからはっとしてクラリスに尋ねる。
「おい、まさか昼も食べていないとか言うんじゃないだろうな?」


