国王陛下の極上ティータイム

「決して毒などではございません。普通のブレックファストでございます。ただ、ジルダの茶葉を蒸らす時間を調整して、通常より渋くなるよう仕上げました」


クラリスの言葉にディオンは目を見開く。


「なぜ…」

「陛下は目覚めがよろしくないと聞きました。少しでも目が覚めるようにと、あえてそうしたのでございます」


それを聞いたディオンは慌てて陛下を見た。

陛下は咳き込みながらも「本当に毒ではない、苦いだけだよ。それと少しむせただけだ」と言う。

それからクラリスを見て「予想以上だよ」と言い放った。


「確かに目が覚めるな、これは。強烈で、痺れるよ」


立ち上がってクラリスを見つめると目を細めて笑った。


「けれど、おかげで目が覚めた」


それを聞いたクラリスは表情を変えずに「それはようございました」と返したので、ディオンは吹き出して笑ってしまった。

「陛下がこんなにも早く目覚めるのは、未だかつてないことかもしれません」


それから陛下に「確かに面白いお茶係ですね」と言うのだった。

意味が分からず首を傾げるクラリスにディオンは尋ねた。


「貴女は怖くなかったのですか?苦い茶を出せば、ランティス様の怒りを買うのではないかと。そうなれば身の破滅になるのではないかと」


その言葉にクラリスは首を横に振る。


「微塵も思いませんでした」


陛下の怒りを買うことすら、クラリスは少しも恐れていない。


「陛下のお目を覚ますことだけを考えておりましたから」