国王陛下の極上ティータイム

「し、しかしだな」

「陛下はまだお休み中で」

「陛下から直々にお言葉がありました。熱い茶を起き抜けに用意するようにと。このままでは茶の温度が下がってしまいます」

並みならぬクラリスの迫力に、衛兵たちは渋々陛下の自室に通した。


陛下の自室にはすでに陛下の側近であるディオンがいて、必死に陛下を起こそうとしている。


「陛下、陛下!本日は同盟国のフォルストへ査察の予定がございます!昨日も申し上げましたでしょう!」

「ん…」

「ランティス様!」


これは、予想外だった。ここまで目覚めの悪い国王陛下が他のどこにいるだろうか。

あまりにも自分が思い描いていた国王像とはかけ離れた陛下の姿に驚きを隠せないまま、「失礼致します」とクラリスはディオンに頭をさげた。

ディオンは驚いた様子でクラリスを見たが、「ああ、お茶係のクラリス殿ですか」とクラリスの要件を見抜いた。


「陛下から直々にお言葉がありまして、熱い茶を起き抜けに持ってくるようにと。それでお持ちしたのですが」


そう言ってクラリスはいまだ起きない陛下に目をやる。

万が一にもこの国の最高権力者、国王陛下であるというのにこの威厳の無いお姿と言ったら。国民が見たらきっとがっかりするに違いない。


「衛兵の方がいっていらっしゃいました。陛下はお疲れの様子だと」

「実は昨日は隣国のリゼルタに行かれて、たいそうお疲れになっているのです

「そうでなくても目覚めはあまりよろしくのないのですが」、と溜め息を吐くディオンにクラリスは同情しながらも「そうでございましたか」と言葉をかけた。