国王陛下の極上ティータイム

茶棚を見つめながらクラリスは尋ねる。オルレアン伯爵家では、奥様のブレックファストのためだけにブレンドした茶葉を用意していた。

陛下も茶に親しまれてきたということはそれだけこだわりがあってもおかしくはない。

しかし返ってきた答えは以外なもので「それはない」だった。


「いつもジルダの茶葉で淹れている」


ジルダはブレックファストにもよく使われる。手が出しやすい価格で、平民の間にも浸透しているいちばん有名な茶葉だ。

「意外ですね」とクラリスは思わず口にした。

あの陛下のことだ、もっと茶にはうるさいと思っていたのに。


「ランティス国王陛下は心優しいお方だからな、どんな茶でも上手ければ喜んでくださる。まあ、不味いと飲んでくださらないけどな」


ブランはふっと思い出すように笑った。
それからクラリスの方を見て、意味ありそうに眉を下げた。

「どうしたのですか?」とクラリスが問うと「いや、別に」とそんなことを微塵も思っていないような笑みを浮かべたブランが答える。

その顔はまるでいたずらをするような子どもの、楽しみだと言わんばかりの笑顔に似ているとクラリスは思った。


「起きてくださるといいな」


クラリスは首を傾げた。