国王陛下の極上ティータイム

「陛下、クラリス殿が参りました」


伝令役の男性とともにクラリスは国王陛下の自室の前まで来ていた。


__なぜ自分が、こんなところに。

緊張よりも苛立ちが前面に出る。

何せ相手はあの国王陛下なのだ。作り笑いのような笑みを浮かべて真意を見せずに遠回しにするような話し方をする、あの男だ。

クラリスは帰りたい気持ちでいっぱいだった。こんな場所に来るよりもブランと仕事の話や茶の話をしたい。

しかしこれも仕事のうちだと言い聞かせる。

どんなに嫌でも、自分は王族に仕える身。あくまでもいちばんに考えなければならないのは、主人である王族の方々なのだ、と。



「クラリスです。失礼致します」



陛下の部屋に入ると、「やあ、わざわざありがとう」とあの作り笑いにも似た笑顔で出迎えられた。

瞬時に眉間にしわが入りそうになり、その衝動を必死に抑え込む。


「王宮での仕事はどうかな?貴女に合いそうかな。と言ってもまだ1日しか経っていないのだけど」


わざわざそんな話をするために自分はここに呼ばれたのだろうか?

ここで働いていけそうか、と?

まだ1日も経っていないのに?


なんて、無駄な!


クラリスは眉間にしわを寄せて「何か御用ですか」と尋ねた。

すると国王陛下はくすりと笑って「そんな表情をしなくても」と目を細めた。


「オルレアン伯爵家からきみを引き抜いたようなものだからね。貴女が幸せに働けていないなら、オルレアン伯に申し訳が立たないんだよ。クラリス・リーラン」


クラリスは自分の名前を国王陛下が知っていることに驚きつつも、「どこで働くのも同じことです」と答えた。