「主人をいちばんに考えることができるなら、まあ大体大丈夫だろう。問題はあまりない」

仮にも王宮に勤める使用人がこんなに緩くていいのか、とクラリスは心の中でつっこむ。もしかしたらクラリスが緊張しているのではと気遣ってくれたのか、いやしかしそれにしても軽いのではないか。


「茶は心が休まる一時だ。王族の方々と日頃から関わりを持って、王族の方々が少しでも休めるようにするといい」

日頃からの関わり! それはクラリスにとって最大の困難だ。

元々クラリスは話すことがあまり得意ではなく、友達も決して多くはいない。議論や仕事の場合では要点を掴んでうまく受け答えすることはできても、雑談はこの上なく苦手としている。


「心配しなくても、王族の方々は気さくな方ばかりだ」


強ばった表情をするクラリスを見てやはり緊張しているのだと思ったブランはそう言った。

しかしクラリスは緊張しているのではなく日頃の関わりが大の苦手だとは言えず、「それは、少し安心しました」と言うのがやっとだった。


「しかしまあ、ランティス様とお話をしても、君ならきっと大丈夫だろうな」


クラリスの表情を見ていたブランはふっと目を細めた。


「恐らく君は王族や貴族との関わりを望んでいないだろうから」