「これは、本当にエメ?」

衛兵が固唾を飲んで見守る中、王太后の第一声はそれだった。


「どういうことです、母上?」

国王陛下の問いに、王太后は「あなたも飲んでみれば分かるわ、ランティス」と微笑む。


「貴女も飲んでみなさい、ジュリエッタ」


母親である王太后に促され、陛下と王女は目を見合わせてティーカップを持った。

そして一口飲んだ瞬間目を見開いた。


「これが、エメ?」

「信じられないですわ」


クラリスは内心喜んだ。目だけでブランを見ると、してやったりと言わんばかりの嬉しそうな表情をしている。


「こんなに香りと甘みが強く、渋味の少ないエメがあるのですね。これならこれからも飲んでみたいと思えますわ」


王女の言葉にクラリスは頭を下げた。


「サンドリアは標高の高い地域でございます。標高の高い地域で採れた茶葉は渋味の少なく、味わいの深い茶葉になるのでございます」

クラリスの説明に王族の方々は感心している様子だった。


「まあ、そんなものがよくありましたね」

王太后の言葉を聞いたブランは「先日仕入れたばかりでございました」と答えた。


「しかしながらサンドリア産の茶葉は非常に繊細で扱いが大変難しいのでございます。ですがクラリス殿は短時間で完璧に扱うことができました。彼女の腕は確かです」


ブランの言葉を聞いた国王陛下は「ブランがそこまで言うなら相当のものだね」と笑った。

クラリスはその笑顔を見て、国王陛下はよく笑う人なのだなと思った。楽しそうなそんな表情を浮かべているが、実際何が楽しいのだかさっぱり分からないが。