ブランの言葉は真実だった。

ランティスが風邪を引いてからクラリスは一度もランティスに会ってはいない。


「面会制限がありますから」


国王陛下であるランティスの体調がこれ以上悪化しないように、今は薬室長やディオンなどの特定の人しかランティスの自室には入れないことになっている。

そしてお茶係は制限がかかり、クラリスも例外ではなかった。


「何とかならないものなのか」

「無理でしょう。正当な理由もないのに」

「クラリスはそれでいいのか?」

ブランの問いにクラリスは言葉を詰まらせて、けれど平静を装いながら答えた。


「仕方のないことです」


仕方ないことだと分かっていても、心までは騙せない。寂しいという気持ちが込み上げてくると同時に、体が弱った時に傍に居られないもどかしさも感じていた。


「クラリスは本当に自己犠牲が多いな」


ブランは少し憂いを帯びた笑みを浮かべる。


「国王陛下がお相手なので」


クラリスの中にも、ランティスの傍にいたいという気持ちはある。

恥ずかしさもあって中々口に出せないのだが、それ以上にクラリスが言えなくなるのは、相手が国王陛下という立場にあるが故だった。