我らが国王陛下様・ランティスが体調を崩したという話はすぐに王宮中の知るところとなった。

どうやら流行の風邪を引いてしまったそうだ。

そのせいで薬室や厨房はもちろんのこと、陛下の公務の調整をどうするのかとディオンを中心とした役人達が慌てふためいていた。

一方、茶室には何もなくいつも通りの日々が流れている。

茶室からも何か陛下のために茶をお出ししてはという意見があることも分かってはいるが、陛下が風邪を引いた今、陛下が口にする物は全て薬室の管理下にあるのだ。

つまり薬室の許可が下りなければ茶も食べ物もお出しすることもできないという状況なのである。

薬室も薬湯などの飲み物もお出しするということから、陛下の調子がよくなるまでは薬室にお任せしようというのが茶室と薬室の中での取り決めとなっており、クラリスもそのことについて賛成していた。

それだというのにブランはクラリスにこう聞くのだ。


「ランティス様にお茶を届けにいったらどうだ?」


それを聞いたクラリスは絶句した。一体何を言い出すのかと言葉がのどまで出てきて、何とか口をつぐんだ。


「…何をおっしゃるのですか」


するとブランは至極当然だと言わんばかりの顔をして「何をって、その通りだ」と言ってのけた。


「何てことをおっしゃるのですかと言っているのです」