翌日、王宮に出勤すると既に騎士団の人々がいて、忙しなく動き回っていた。

どうやら騎士団員はそれぞれランティスの声があればすぐにでも動けるようにと、フォルストに攻撃する手はずを整えていたらしい。

だがそれは変更となった。

フォルストに攻撃するのではなく、フォルスト国の敵国に攻撃することになったのだ。

それを教えてくれたのは、クラリスより早く出勤をしていたブランだった。

どうやらブランもランティスの動向が気になっていたようで、居ても立ってもいられなかったらしい。


「敵国はフォルストに攻撃をしかけているらしくてな。フォルストは同盟相手であるこの国にまで被害が出ないようにと、敵国側に同盟国と手を切ったと思わせるための工作として交易妨害をしていたらしい。フォルストは決して裏切ってはいなかった」


クラリスはそれを聞いて驚きつつも納得もしていた。

あの優しい国王がなぜこんな行動を取ったのか、なぜ自分を悪者にしようとしていたのか、その理由の全てに納得がいくような気がしたのだ。


「衛兵の話では昨日の夜遅くまで、フォルスト国王様とランティス様が話し合われたらしい。そこでフォルスト国王様が仰られたそうだ」


クラリスは「良かった」と思わず呟いてしまった。

やはりあの後、アルベルトはランティスに会いに行ったのだ。そしてそこで全てを話されて、ランティスもそのすべてを受け入れたのだ。

きっと2つの国と国王にとっての最悪な未来は失われたのだろう。そう思うとクラリスの胸も軽くなる。


「けれど、敵国に攻撃をするのですね」

その結末を選んだのは意外だった。フォルスト国王はともかく、ランティスがそれを選ぶとは考えつかなかったのだ。