「今更ランティスに告げられるだろうか。もうランティスはフォルストに攻撃するための算段を考えているかもしれない。今更告げたところで意味はないかもしれない」

目を伏せて弱気なことを言うアルベルトに、クラリスは「そんなわけがありません」と首を横に振った。


「ランティス様はフォルストとアルベルト様のことをとても大切にされているご様子でした。だからこそ決定的な言葉を避けて席を立たれたのだと思います。話を中断させたのは、きっとそのためです」


どれだけランティスが優しい人物か、理解しているのはきっとクラリスよりアルベルトだ。幼い頃からともにいたアルベルトの方がずっと分かっているはず。

それでも弱気になってしまうのは、傷つけてしまったという罪の意識からくるものだろう。

けれどクラリスには確信を持って言えることがあった。


ランティスは今もきっと、アルベルトから本当のことを告げられることを待っている。


「ランティス様はフォルストや貴方を傷つけずに済む方法を今も探しておられるはずです。どうかその思いを無駄にしないでください」


「お願いします」とクラリスはまた頭を下げた。

例え断られたとしても何度でも頭を下げるつもりだった。自分が頭を下げることでランティスが救われるなら、その方がずっと良かった。


しばらくの沈黙の後、アルベルトは「頭をあげてくれ」と小さな声で呟いた。


「分かった。ランティスに全てを告げる」


その言葉にクラリスは心から安堵して「ありがとうございます」とまた頭を下げた。

それから自分のしでかしたことの大きさに気づいて「出過ぎた真似をして申し訳ございませんでした」と慌てて謝った。

その様子を見て「今更だな」とアルベルトは笑う。


「貴女のまっすぐな言葉のおかげで決心がついた。感謝を述べるのはこちらの方だ」