「今はきっと、混乱していらっしゃるのでしょう。信頼していたアルベルト王からそのようなことを聞くとは思っていらっしゃらなかったので。今は考えがまとまらないだけだと思います」


貴族にとって、友と呼べる存在がいることがどれだけ恵まれていることか、クラリスは知っていた。オルレアンのお嬢様にはそのような存在はおらず、上辺だけの付き合いしかできないことを嘆かれていた時期もあった。

権力と金に支配されている貴族社会では寧ろ友がいる方が珍しい。友のように接していても、その人が没落すればその時から他人のように扱う。家同士が対立すれば憎み合いすらする。

そんなことは日常茶飯事だ。

まして王族、国の中でも最高権力者である国王にとっては格別の存在だろう。側近や臣下とはまた異なる、信頼できる存在。それがどれだけ心の支えとなっていたのか、きっと計り知れない。

ランティスはそんな特別な存在に裏切られた。噂や見聞ではなく、本人に目の前で言われたのだ。

どれだけの衝撃だっただろう。どれだけの悲しみの中にいるだろう。

きっとフォルストの裏切りなど信じたくなかったはずだ。アルベルトを信じたかったはずだ。

今、彼に信じられるものなどあるのだろうか。


クラリスは拳を握りしめた。