国王陛下の極上ティータイム

主人が切られると思い咄嗟にアルベルトの前に出て柄に手をかけていたアルベルトの側近も、「お前も戻れ」という主人の言葉に元に戻る。

一触即発の空気がふっと緩んだ瞬間だった。

けれどいまだに空気は張り詰めたまま。さらに深く冷たい沈黙が鎮座している。

ランティスの和やかな表情が一転氷のような冷たい表情に変わったのだ。


「__アルベルト、何を言っているのか分かっているのか?」


ランティスの鋭いエメラルドの瞳がアルベルトを捉える。


「我らは同盟国同士だ。アルベルトの言葉はその関係に傷をつけ、こちらがフォルストに攻撃をするきっかけを与えかねない。分かっているのか?」


アルベルトはランティスの言葉を黙って聞き、「それは当然のことだろう」と答えた。


「撤回しないのか?」

「撤回するも何も、本当のことだ」

「我が国がフォルストに攻撃を仕掛けても良いというのか?」

「ランティスが攻撃を仕掛けてくるのならば、わがフォルストも全力で受けて立つ」


ランティスは厳しい表情でアルベルトを見つめていた。

けれどアルベルトがこれ以上何も言わないと分かると「__クラリス」と低くクラリスの名前を呼んだ。

「茶を」

「は、はい」

そう言われて出しそびれていた茶を差し出す。茶の温度はすっかり冷めてしまっていた。

ランティスは立ち上がりそれを受け取ると「アルベルト」と親友の名を呼んだ。


「その言葉が本当だとするのなら、こちらも考えねばならない。話はここまでだ」


それからマントを翻し、応接間の奥の扉から出て行ってしまった。