国王陛下の極上ティータイム

「ブランさん、できたんですか?」

「ああ、まあな。これならまあ、フォルスト王に出しても失礼にはならないだろう」

「なんとか間に合った」とブランは長い息を吐いた。

「ありがとうございます、ブランさん!」

「これでも王宮お茶係なもんでな」


そう言うとブランは椅子に腰掛けてしまった。


「キームとジルダだけでは茶葉が足りなかったから、アーサを加えた」

「アーサを。だからアーサの香りがほのかに香るのですね」

「ああ」とブランは返事をすると目を閉じた。


「配合に疲れた。茶を運ぶのはお前に頼む、クラリス」

「えっ、私ですか?」


クラリスは信じられなかった。自分など同盟国の国王にお目にかかれる立場になどない。それも茶室長であるブランを差し置いてだなんて。

戸惑うクラリスにブランは微笑む。


「お前に運んでほしいとランティス様からも仰せつかっている」

「ランティス様が…」


「なんでも、クラリスがいると迷わずに済むのだそうだ」


「ランティス様が側近以外をそんな風に評価するなんて滅多にないことだ」と目を細める。

クラリスはなんて言葉を返せばいいのか戸惑って「それより、もうフォルスト王がいらっしゃったとお聞きしましたか?」と話を逸らす。

ブランは意図的にクラリスが話を逸らしたのを理解しながらも「そのようだな」と頷いた。

「伝令役が叫んでいた。きっと今頃はランティス様の応接間にいらしているのだろう。となれば早く茶を運ばねばならないな」

それから椅子から立ち上がりクラリスをまっすぐに見据えた。


「頼むぞ、お茶係」