胸が締め上げられるみたいに切なくて、息をしているかどうか分からなくなってしまうほど苦しい。

自分から言い出したことだ、そのはずなのに。クラリスの頭の中は軽く混乱していた。

どうしてこんな気持ちになるのだ、と。


本当は、「そんなことない」とランティスに否定してほしかったのだろうか?


ふっと出てきた答え。それを否定したくて、認めたくなくて、クラリスは拳を握りしめた。爪が手のひらに食い込むほどに強く。けれどその痛みすら、今のクラリスには感じる余裕がなかった。


「では、私はこれで」


クラリスはいつも通りを心がけて頭を下げる。

そしてランティスの顔を見ないように台車を押して執務室を出た。

扉が閉まる瞬間、盗み見たランティスの表情はいつになく寂しそうだった。