「クロードのことは気にしなくていい。クラリスに失礼なことを言って、すまなかった」


「いえ、そんな、ランティス様が謝ることなど何も」


「あいつはかなり心配性なんだ」


ランティスはそう言って眉を下げる。

けれどクラリスは、クロードの言葉を気にしないわけにはいかなかった。

クロードはきっと意地悪をしているわけではない。クラリスを近づけさせたくないと思うのは、クラリスが聞き食わないというわけではない。ランティスを一番に考えているからだ。

ランティスは何も言わないが、このところ、執務机に積まれる資料の数が明らかに増えている。笑顔を保っているけれど、明らかに疲れている。

他国どころか同盟国であるはずのフォルストの物資も届かないという、この緊急事態。ことは想像よりもずっと大きいのだろう。

そんな非常事態に、自分と関わることでランティスを危険な目に合わせるわけにはいかないとクラリスは思った。

ブランも言っていた。お茶係に必要なことは、王族を一番に考えることだと。

ならばクラリスがするべきことは、ランティスに関わることではない。ランティスを陰から見守ることだ。



「陛下」


クラリスはランティスの宝石のような美しい瞳を見つめた。