それはつまり、もうランティスと関わるなと言われているようなものだとクラリスは思った。そう尋ねるとクロードは顔色を変えず「物分かりがいいな」と言った。クラリスは目を見開いた。
「オルレアン伯爵家から来た、取るに足らないお茶係の田舎娘と、国王陛下が懇意にしていると噂が出回ればどうなる?その被害は陛下だけでなく、オルレアン伯にまで及びかねない。それを分かっているのか」
クロードの言葉はその通りだろうとクラリスは思ってしまった。納得してしまったのだ。
印象というものが貴族にとってどれほど大切か。そしてそのことがどれだけ大切に思う人々を傷つけてしまうのかということも、その怖さも。オルレアン伯爵家で長年勤めてきたクラリスには身に染みて分かることだった。
「お前は陛下の癌になる」
その言葉でクラリスはどん底に突き落とされた。
気づいた時から身の程知らずの恋だと分かっていた。諦めなければならないことも分かっていた。だからこそ忘れようと決意したばかりだったのに。
身を引け、と言われた。
自分が関わることでランティスだけでなくオルレアン伯にまで迷惑をかけかねないと。恋の甘美を望まずとも、関わるだけで害になるのだと。
何も言えなくなったクラリスを、クロードは横目で見ながらその場を後にした。


