ただでさえ嫌いだった。いつもヘラヘラして、からかってきて、目覚めは最悪。


けれど本当は分かっていた。ランティスがただのヘラヘラ笑うだけの頼りない国王だというわけではないことを。


けれど同時に、これは諦めなければならない恋だとも分かっていた。

クラリスは心臓の辺りで拳を握り締めた。

クラリスは田舎出身の平民で王宮のお茶係。ランティスは最高権力者たる国王陛下。あまりにも身分が違いすぎる。


こういうことを言うのだろう。

身の程知らずの恋、足下を見ろ、と。


つう、と一筋の涙が頬を伝う。


初めての恋だった。初めての感情だった。

それなのに気づいた瞬間、諦めなくてはならないと現実を突きつけられた。

それがこんなに悲しいことも、クラリスは初めて知った。


「クラリス?」

そこにジェラルドがやってきてクラリスに声をかける。

「どうした、こんなところに突っ立って。なんだ、気分でも悪くなっちまったか?」

心配そうな顔をするジェラルドに「大丈夫です」とクラリスは笑った。


「何でもありません」