「ランティス様に、私が?」

クラリスが城に来てから、ランティスは幾度もクラリスの茶を求めた。けれどそれは新しいお茶係の目新しさからくるものだろうとクラリスは考えていた。

じきに飽きるだろう、と。

しかしもうこの城に来て何日も経つ。クラリスの茶の味などとうに分かっているだろうに、それもこんなに大変で忙しいだろう時に、わざわざ指名されるだなんて思ってもいなかったのだ。

ランティスの真意が掴めないままでいるクラリスに、ブランは口の端をあげて柔らかく笑った。


「ランティス様はクラリスの茶がお気に入りだそうだ」


例えようのない喜びが心の底から込み上げてくるようだった。

仕事を認めてもらえたことだけでも嬉しいのに、自分の茶を気に入ってもらえたことは何にも換えがたい喜びだった。


そんな嬉しい気持ちでいっぱいのはずなのに、心臓はいつもより大きな音を立てる。



___やっと、見つけた。


___きみが大切だからだよ。

___俺にとってきみが特別だと、そういう意味だよ。


いつかのランティスの言葉を思い出す。

途端、顔に熱が集まってきて、心臓も痛いほど強く鼓動した。