「いつもと変わりません。陛下こそお元気そうで何よりです」


軽く頭を下げて短く言うクロードに、ランティスは眉を下げた。


「きみに、そんな仰々しい口調で話されるとこっちまでやりにくくなる。普段通りの話し方で話してくれないか」

「そうは言われましても無理です。貴方は国王陛下ですから」

「分かったよ。じゃあせめて敬語で話すのやめてくれないかな?あと名前で呼んでほしいんだけど」

ランティスの主張は、つまりは普段通り話せと言っているようなものだ。先ほどクロードが無理だと言った話し方のことだろう。その証拠にクロードは鋭い目つきでランティスを睨みつけている。


「だから、それは無理だと先ほど…」

「命令。クロード、普段通りに話してくれ」


にっこり微笑むランティスがそう言うと、クロードは大きな溜息を吐いて「今だけな」と言った。


「本当に、お前はずるいな、ランティス。それを職権乱用と言うんだ。ディオンからもそういうのはやめろと言われているだろう?」


クロードは呆れたと言わんばかりの表情でランティスを見つめる。ランティスは満足そうに微笑んだまま何も弁解はしなかった。


「いくら言ってもランティス様はこれだけは聞いてくれませんからね。家臣たちは困っているというのに」


ディオンにまで溜息を吐かれ、ランティスは「そんなに責めなくてもいいだろう」と反論した。

楽し気に話す彼らの姿はまるで学友同士のそれと同じだった。

上辺だけの繋がりなんかじゃない、もっと確かな深い絆のようなものさえ感じ取れた。