「円香……もし…もし、私が放課後1時間しても此処に戻らなかったら…その時には由井せんぱい達に連絡、して?」

「…大丈夫なの?本当に1人で?薫せんぱいには…」

「大丈夫…うん、きっと…せんぱいは…」


事情を飲み込めていない円香にそれ以上は言えず、私は
自分に言い聞かせるようにして、円香へと頷いた。



どうしても、どうしても、与えて欲しい、貴方の全て。
こんなにも心が震えて、堪らなくなるのは…きっと貴方以外いないから…。


「もしも、これが罠だとしても…それでもせんぱいは私が守る…」


そうきっぱりと言い切って、私は一歩一歩裏にはへと足を進めて行った。


怖くないわけない。
本当は、足が竦んでしまうほど恐怖に押し潰されそうだ。

だけど、せんぱいが本当に監禁されているのなら…。
痛めつけられ、苦しんでいるのなら…。

私はそんなこと、耐えられない。
耐えられるはずが、ない。


せんぱいが、私を守るといってくれる以上に、私だってせんぱいのことを守りたい。

それは…誰かを好きになれば湧き起こる、当然の想い。


存在するかさえもあやふやな神様に、祈るようにして、私は荒くなる呼吸を押さえた。


待っていて。
せんぱい。

いつも守られてばかりは嫌なの。
私は貴方と対等でありたい。
貴方と対等の愛情をこの胸の中に秘めているから…。
それを、今…貴方へと証明させたい。
刻みたい。

それを貴方が望まなくても。
拒んだりしても…。
私は、貴方をもう逃してはあげられない。


ねぇ、せんぱい?


こんな私も受け入れて…。


人を好きになることを、欲しがることを知った私を…。


お願いだから、受け止めて。