意識が、常にせんぱいへと流れて行く。
そんな中、ツカツカと先生が私の方へやって来た。
「おい、前原。少し話がある。職員室へ来なさい」
「……はい」
先生の話が何に繋がるのかは、先生の表情を見れば一目瞭然だ。
きっと、せんぱいのことを悪く言うんだろうな…。
私は、先生の後ろを複雑な思いでついていった。
なんで、大人というのは、こうも子供を抑圧することに専念するんだろうか…。
がらがら
古い引き戸になっている職員室に入ると、他の先生も興味があるのか、手にしている仕事を置いて、此方を向いた。
「失礼します」
少し俯き加減で中へ入ると、そこには先に来ていたのか、神谷せんぱいもいて…。
「あぁ、神谷もいたのか」
「うっす。って、あれ?前原?」
「神谷せんぱい…」
言い様のない不安でいっぱいだった私の顔を見て、神谷せんっぱいは、ニカッと笑う。
そんな神谷せんぱいに対して、中山先生は大きな溜息をついて見せる。
「神谷、お前はもう用は済んだんだろう?だったらさっさと午後の授業に備えんか!」
「おお怖。わぁーったよ、じゃあな、前原」
ひらりと私の横を擦り抜けて行くせんぱいは、私の隣まで来ると他の誰にも聞こえないような声で、
「先公の言うことなんか、気にすんじゃねぇぞ?」
と言った。
私は、それが酷く嬉しくて、今までの不安が消えていくのを感じた。



