「ふぅん?で、薫せんぱいはそいつらをそのまま野放しにしたわけだ?」
「野放しって…」
「だって、そうじゃない。脅すだけで、なーんにもしなかったんでしょ?」
「わ、私が止めたんだもん。せんぱいに、誰かを傷付けて欲しくなかったし…」
「…ふぅぅぅぅぅん?」
「ま、円香ぁー…」
探るような円香の視線に、私はたじろぎバサリと雑誌を閉じた。
そんな私に思い切り呆れたような溜息を吐いて、円香は「分かった、もういいよ」と言ってよしよしと頭を撫でてから、席に戻っていった。
…全然、納得してなかったなー…。
そう思いながら、私はつつ、と雑誌の表紙を指で辿ってから溜息を吐いた。
何か、引っ掛かるものがあるのに、それがなんなのか…そこに辿り着けない。
モヤモヤする。
だけど。
昨日の薫せんぱいのキスが、思考を邪魔して上手く身動きが取れなかった。
「せんぱいのばか…」



