なんで、こんなに人の気持ちに聡いんだろう、この人は。


「…なんだ?」

「…せんぱいって、格好いいですよね…」

「…何言ってやがんだ。いきなり何を言うのかと思えば…照れんだろーが」


ふい、と背けられた顔。
それが寂しくて、追い掛けようとする私。


そんな二人の攻防が、周りの空気を張り詰めたものにする。

ふと、それに気付いた薫せんぱいが、片眉を吊り上げて、他のメンバーに声を掛けた。


「あ?何か文句あんのか?」

「…いやー?…別に?なぁ?みんな?」


何か言いた気だけど、敢えて言わない羽鳥せんぱいに、うんうんと頷くだけのメンバー。

薫せんぱいは、そんなものを気にも留めずに、もう一度私の髪を撫でて、微笑んだ。