「みーま!またその雑誌ー?好きだねぇ?」


HRが終わってすぐに斜め前の席から私の方を振り返った円香は、少しだけ苦笑して私に話し掛けて来た。
私の手元には、ロックバンドを特集した雑誌がる。


「いいじゃん。好きなんだもん」

「膨れない、膨れない。誰もダメって言ってないんだから、ね?」

「…うん」


そう言って、私はそっとその雑誌を指で撫でた。
今月の表紙を飾っているのは、今人気上昇中のヴィジュアルバンド、「Avid(アヴィド)」。
私はこのバンドがまだインディーズだった頃からのファンで、中でも黒いマスクを常に付けているギターのKAZUのファン。
今ではこんなにも人気が出て、テレビや雑誌に引っ張りだこだけれど、少し前までは人もまばらなライヴハウスで『密会』と題したライヴをしていた。


「未麻のバンドはどうなの?」

「私のは、ただのコピバン程度だよ。せいぜい学祭に出られるクラス」



そう言いながらも、言葉の後に出て行くのは色の濃い溜息。
バンド活動は中学一年の頃からしていて、かれこれもう4年目になる。
家の両親は、私にあまり関心がないのか、一人娘だからどう扱っていいのか分からないのか、…多分絶対に前者だと思うけれど…ほとんどわたしのしてることに口を出さない。
だから、一応表面上は良い子を演じているけれど、こうしてバンド活動をしたり、最近では堂々とライヴに行ったりしてる。