「わりぃ。待たせたな…」

「薫ー。おせぇよ。お陰で未麻ちゃん捕まえちゃっただろー?」

「あぁ??…つーか、なんでだよ?てか、…未麻…?」



私は、その光景を、息を飲んで見ていた。

何故か…それは、…さっきまでステージの上にいたKAZUがまるで舞い降りてきたような寺門せんぱいの登場だったから。



今、未麻…って呼ばれた。

全然、知らない筈なのに。

勿論神谷せんぱいの話が本当だったら、知ってるかもしれないけれど…。


なんで、名前を呼ばれただけで、こんなにもドキドキするんだろう?



何かが、カチン、と嵌る音がする。

ねぇ、もしかして…この人は、私の事を掬い上げてくれる人なのかしれない。


そんな風にインスピレーションで思ったのは、きっと間違いじゃない…。



「てら、かどせんぱ、い?」

「…薫って呼べよ」



そんな、KAZUに似た瞳で私を見ないで。
そんな、熱を帯びた瞳で私を捉えないで。




「か、薫、せんぱい…」





感情がかき乱される。


何かが起こる気がしてしまう。


私は、素直に…そう、名前を呟いた。