【完】V.I.P〜今宵、貴方だけの私になる〜



私は一呼吸置くと、デスクの引き出しからもう一度、真っさらな便せんと封筒を取り出し…「退職願」と書いた…。
けれどすぐに、書き直し「要人さんへ」とした。


その中身は、私の全ての本音。

本人を目の前にしては言えない本音だった。



『要人さん、ごめんなさい。
 私はとても狡い人間なんです…。
 貴方の愛に軽く応えることも、拒まれることも出来ない…。
 そんな、弱い人間なんです。

 だから、私は貴方の元を離れます。

 跡形もなく。


  ……ありがとう。
       さよなら。
                     忍』



私は誰もいなくなった、社長室に入り彼のデスクにそっと触れる。


「要人さん…さよなら……」


それだけ呟くと白い封筒をそこに置いて、私はそこから静かに立ち去った。